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投稿日:2017年09月05日 更新日:2021年03月30日
ゆーすけ |片付け部編集長
片付けが好きで、妻を巻き込んで毎週断捨離を行っています。仕事でも遺品整理、ゴミ屋敷、生前整理、不用品回収、特殊清掃の現場に行き、プロの技を学んでいます。片付けをしたい方にとって有益な情報をお伝えいきたいと思っています。
相続に対してどのような印象をお持ちでしょうか。
相続にはプラスの財産やマイナスの財産を受け継ぐ効果があります。
しかし、あなたの行動如何によっては相続人としての権利が無くなってしまう可能性があります。
それを相続欠格と呼びます。
相続欠格に該当してしまうと、相続に対して大変な不利益を被ることになります。
場合によっては、「こんなことで相続欠格になってしまうの!?」という事由もございますので、よく閲覧していただき、注意していただきたいと思います。
相続欠格という言葉をはじめて聞いたという方も多いと思います。
相続欠格とは、特定の相続欠格事由が認められる場合に、その者の相続権を失わせることを意味します。
相続欠格は民法891条に規定されており、各条文に該当する行動をした場合に、相続欠格となります。
民法891条
一 故意に被相続人または相続について先順位もしくは同順位にある者を死亡するに至らせ、または至らせようとしたために、刑に処せられた者。
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が事故の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は脅迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者。
四 詐欺又は脅迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者、
五 相続に関する被相続人の遺言書偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者。
上記の様に相続欠格事由は定められています。
つまり、相続人や被相続人を殺したり、被相続人が殺されたことを黙っていたり、遺言書に違法に何らかの手を加えた場合は相続欠格に該当します。
相続欠格に該当すると、もともと相続人ではなかったことになり、一切の相続権を失います。
被相続者の子供が、親より先に亡くなっている場合、その者に子供がいれば(被相続人の孫)、その子供が相続人となることを代襲相続と言います。
それでは、相続欠格事由に該当したことにより相続人から廃除された者の子供は、代襲相続することができるのでしょうか。
実は、代襲相続することができるのです。
犯罪行為を行った者に対しても代襲相続が行われるというのは違和感があるかもしれませんが、犯罪行為は行為者のみに対するもので、その子供も同じく犯罪者になるわけではありませんから、当然と言えば当然ですね。
相続欠格を理由とする代襲相続の可否については、民法887条に代襲相続できる旨が規定されております。
どうすれば相続欠格者に該当するのかは分かりましたが、それではどの様に相続欠格者であることを証明するのでしょうか。
殺人については裁判で明らかになることと思いますが、その他については相続欠格事由にあたるかどうかを判断することは難しいように感じます。
相続欠格は家庭裁判所の審判や戸籍による公示がされるわけではありません。
相続欠格事由の存否を証明することは難しく、相続欠格に該当するとして特定の相続人を遺産分割協議に参加させなかった場合に、遺産分割協議後に相続欠格に該当しないことが明らかになった場合は、遺産分割協議は無効となり、再度遺産分割協議を行う必要があります。
相続人が相続欠格にあたる場合、どのような手続きが必要になるのでしょうか。
実は、相続欠格に手続きは存在しません。
相続人が相続欠格事由に該当すると、自動的に相続権を失います。
しかし、相続欠格に該当すると思っていた相続人が相続欠格に該当していないことが後から判明した場合も考えられます。
相続欠格者として遺産分割協議から排除されていたわけですから、大きなトラブルに発展する可能性があります。
よって、相続欠格に該当する可能性がある場合には、相続欠格に該当する者を被告とし、相続権不存在確認請求訴訟を提起するという方法もあります。
これは、「あなたは相続欠格者で間違いありませんね」ということを確認する裁判です。
例えこの裁判を提起せずとも相続欠格者であることに変わりはないのですが、素人の判断ミスを防ぐための確認訴訟となります。
その他、相続後に相続人の中に相続欠格者がいることが判明した場合は、その他の相続人は相続欠格者に対し相続回復請求を提起し、相続欠格者から相続財産を取り戻すことができます。
相続欠格に該当する行為はいずれも親族である被相続人や相続人を害する行為です。
私腹を肥やすために関係者を殺害することは論外としても、遺言の偽造変造を防止する観点からは、刑法とは別に別途罰則として相続欠格に関する規定が定められていると言っても良いでしょう。
つまり、遺言の制度を守るために相続欠格は立法されています。
遺言書を自ら作成する自筆証書遺言の場合、その保管方法はまちまちで、保管を近しい者に任せる場合もあります。
これは、自らの死後、遺言書の存在が発見されないことを防止するためです。
しかし、悪意のある近親者に遺言を預けてしまうと、内容を改ざんされる危険性があります。
痴ほうの親に無理やり遺言を書かせることもできるでしょう。
もし、そのような犯罪が横行してしまうと、日本の遺言制度を揺るがす大きな問題となります。
違法な遺言をなくし、遺言制度を守るためにも、相続欠格にはこのような相続権を奪うという強い規定が定められていると考えられます。
自筆証書遺言に対する不正行為が最も可能性が高いと前述いたしましたが、自筆証書遺言偽造による相続欠格を争った事例がございますので、ご紹介させていただきます。
【参考・参照サイト】『裁判所公開資料』
登場人物:幸子(亡くなった人で、一郎、二郎の母親)、一郎(亡くなった母親幸子の子供で法定相続人)、二郎(亡くなった母親幸子の子供で法定相続人)
幸子は、200X年1月20日、息を引き取りました。
その結果、一郎及び二郎が相続人となり、幸子の財産を相続することになりました。
ここで二郎は、幸子が作成したとされる自筆証書遺言を一郎に見せました。
遺言の中には、「幸子の財産は二郎に相続し、一郎には財産をあげない」と記載されていました。
その遺言の内容に驚いた一郎は、遺言は二郎が勝手に作成した偽物の遺言書であると主張し、裁判を起こしました。
争われている部分その1
この自筆証書遺言は二郎が幸子に頼まれたわけでもないのに勝手に作成したものである。
遺言書を勝手に作成するという行動は、法律で禁止されている行為であり、その法律によれば、遺言書を勝手に作成した法定相続人は、相続権を失うと決められていることから、二郎は相続権を失うことになる。
つまり、本来相続人となるはずだった二郎は、幸子の財産を全く相続することができず、一郎がすべての財産を相続することになる。
争われている部分その2
もし、二郎が相続権を失うことにならないとしても、遺言書には、具体的に何を一郎に相続させるかがはっきりと記載されていないため、遺言書として何の効力ももたない。
よって、遺言書がなかったものとして相続の手続きを行うことになるため、法律に決められているとおり、幸子の財産は一郎と二郎で半分ずつ相続する。
争われている部分その3
もし、二郎が提出した幸子が作成したとする自筆証書遺言が本物であったとしても、一郎には最低限相続することができる権利があるため、その権利を主張する。
争われている部分その1
ア 一郎の主張
自筆証書遺言を作成した幸子は、200X年1月1日に入院し、入院してからは一度も外に出ることなく、200X年1月20日、病気により亡くなりました。
こんなに病状が悪い幸子が、入院した翌日に遺言書を作成し、自宅の押人れに置いておくなどということは、できるはずがありません。
このような状況からみると、この自筆証書遺言は幸子が死んだ後に、二郎が勝手に作成したものであることは、疑いようがないことです。
イ 二郎の主張
一郎の指摘は間違っています。
私は幸子の名前を使って、勝手に自筆証書遺言を作成していません。
この自筆証書遺言の日付が200X年1月2日になっているのは,幸子が誤って記載したものです。
争われている部分その2
ア 一郎の主張
もし、二郎が相続権を失う行為をしていないとしても、この遺言書の1行目に書かれている「すべて二郎に、まかせる。」との記載や、2行目の「一郎には、いっさいあげない。」との記載は、いった何をどれくらい相続させるのかが分からず、一郎に遺産を全く相続させないという意味の記載とは判断できません。
よって、この遺言は無効です。
イ 二郎の主張
一郎の主張は認めません
争います。
争われている部分その3
ア 一郎の主張
もしこの遺言書が有効であるとしても、この遺言書は,一郎が最低限相続することができる部分まで、相続できないようにしています。
イ 被告の主張
一郎の主張は認めません。
一郎は、この遺言書は二郎が勝手に作成したものであると主張しています。
その根拠は、遺言書の日付は幸子が入院した翌日であり、二郎は幸子が入院する時に、印鑑等を入れていたバッグを病院に持って行ってはいないと話しています。
よって、幸子が入院した翌日にこの遺言書を作成したと考えるのは難しく、この遺言書は、保管していた二郎が勝手に作成したものであるだろう、といえます。
しかし、遺言書の日付は未来の日付で記載することもあり、また、遺言者が日付を間違って記載することもあるので、遺言書の日付の日に遺言書が作成された可能性がないからといって、遺言書の保管者が勝手に作成したものであるとみることもできません。
この遺言書の幸子が押したとされている印鑑の形が、幸子の印鑑であることは、誰も否定的な意見を言っていないため、この遺言書は幸子が作成されたものと考えられます。
とは言っても、この遺言書は、全体の文字の形が一定ではなく、日付の文字の形は二郎が作成した陳述書の文字の形ととても似ています。
よって、この遺言書の日付は、二郎が記載したものであると推測することができます。
さらに、この事実以外に、幸子は200X年1月1日に入院し、この病院から1度も外泊、外出することなく同月20日に病気によって亡くなっているため、この遺言書は、幸子が入院前に本文を作成したものの、日付を記載しないまま署名押印して、自宅に保管していたが、幸子と同居する二郎がこれを発見し、日付が空欄になっていたことから、その空欄部分に「200x年1月2日」と記載したものと判断します。
本件のような自筆証書遺言は、全文自書することが必要であり、しかも、日付も記載しておくことが絶対的必要条件と法律で決められています。
遺言書がこの必要条件を満たしておらず、無効である場合に、相続人が絶対的必要条件を書き足して有効な遺言書にする遺言書の偽造又は変造に当たります、しかし、それが遺言者の意思を実現させるためにその法形式を整える目的で行われたにすぎないものであるときは、この相続人は相続権を失う結果にはならないのです。
この事件について考えてみると、二郎が勝手に記載した事項は、日付の記載という、いつ遺言書を作成したのかを決定するためには大変重要な事柄についての者であり、単純に遺言書に印鑑を押すという簡単な作業によるものではないため、日付を記載した行為が遺言者の意思を実現させるために行われた行為であると判断することはできません。
したがって、二郎がこの遺言書に日付を記載した行為は、法律で禁止された行為である変造に該当し、二郎はこの相続に関し、相続権を失うものであると判断すべきです。
その結果として、この相続については一郎のみが相続人となります。
※遺言書に日付を記載する行為は、遺言書を完成させるためには大変重要な意味を成すため、被告が勝手に日付を書き足した行為は、法律で禁止されている「変造」に当たり、被告は相続権を失う。
相続欠格に関する事例をご覧いただきましたが、いかがでしたでしょうか。
もしかしたら、「日付を記載しただけなのに、相続欠格になるの?」と驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、自筆証書遺言において、日付というのは大変大きな意味を持ちます。
そもそも自筆証書遺言の要件として日付の記載が定められていますから、日付の記載がない自筆証書遺言は無効です。
なぜ、日付の記載がないだけで無効と定められているかといいますと、まず1つとして、もう一つ遺言が発見された場合に、どちらを採用すれば良いか分からなくなるからです。
通常2つの遺言書が発見され、それぞれ相互に矛盾する内容が含まれている場合、日付の新しい遺言書の内容を採用すると決められています。
日付がなければいったいどちらを採用すれば良いかが分からなくなってしまします。
ですから、日付の記載は絶対に必要とされているのです。
もう一つの理由は、遺言書作成者が遺言書の作成を故意に完成させていないことが考えられることです。
遺言作成者は遺言書の内容を決めかねており、遺言書の完成を躊躇していることが十分に考えられます。
そこで、あとは日付を記入すればよいだけにしておいた可能性があります。
このような遺言書を他人が勝手に完成させ、あたかも被相続人が遺言を残したかのような外形的な状況を作り出すことは、被相続人の意思を無視した行為となります。
この二つの理由から、日付の有無は非常に大きな意味を持ち、相続欠格の事由として法定されているのです。
相続欠格と似た制度として相続排除というものがあります。
相続欠格と相続排除は何が違うのでしょうか。
まず、相続欠格というものは、相続欠格事由に該当しさえすれば特別な申請をしなくとも、相続欠格となります。
ここに、被相続人や相続人の意思はありません。
しかし、相続排除は相続欠格とは違い、被相続人が自ら相続人から相続権をなくしてしまうことができるのです。
これが、相続欠格との大きな違いです。
ただ、被相続人が好き勝手に特定の相続人を廃除することができるのではありません。
相続排除の要件は、民法892条に法定されています。
要件は
です。
相続人の行為がこの条件に該当するかどうかは、家庭裁判所がすることになります。
家庭裁判所に「推定相続人排除の申立て」を行い、それが認められると、市町村役場に「推定相続人排除届の提出」を行います。
すると、排除された相続人の戸籍に、相続排除された旨の記載がされます。
相続欠格は、外形的に誰もその者が相続欠格者であることは分かりませんが、相続排除は戸籍に載ることから、一見して誰でも相続排除がなされていることが分かります。
裁判を経てようやく相続排除をしましたが、被相続人はいつで相続排除の取り消しを請求することができます。
これは、遺言による取り消しでも構いません。
代襲相続に関しては、相続欠格と同様に対象となっています。
これまでは相続欠格というと大犯罪を犯した悪人が対象になると考えている方は多かったのではないでしょうか。
実は、日付を加筆するという行為も偽造として相続欠格の対象になってしまうのです。
例え日付が記載されていない自分に有利な遺言書を発見したとしても、それは被相続人の意志であり、失念したわけではないことを理解し、決して加筆(偽造)しないでください。
そうしなければ、相続欠格事由に該当し、一切の財産を失う結果になりかねません。
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