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投稿日:2017年06月01日 更新日:2021年03月30日
ゆーすけ |片付け部編集長
片付けが好きで、妻を巻き込んで毎週断捨離を行っています。仕事でも遺品整理、ゴミ屋敷、生前整理、不用品回収、特殊清掃の現場に行き、プロの技を学んでいます。片付けをしたい方にとって有益な情報をお伝えいきたいと思っています。
田畑などの農地を相続する場合があります。株や債券などの金融資産であれば、保有するにしろ売却するにしろ、その判断は比較的に容易と思います。
しかし、農地となると、いったい何をどうしたら良いのか分からない、といった方が多いのではないでしょうか?
実は農地の相続といえども、特別な規定がある訳ではありません。相続法の一般規定が適用されます。
一方で、農地は農地法という独自の法律により、その売買や、宅地等への転用が制限されています。
又、農地の相続では、農地を分割すると、そもそも農業そのものが成り立たなくなってしまいますので、後継者が一括して相続するケースが一般的です。そのため、他の相続人との間でトラブルになるケースもある様です。
矛盾したことを云うようですが、農地はやはり普通の土地とは扱いが異なるのです。以下に、農地を相続する際の具体的な流れと、どんな点に注意しなければならないのかについて解説いたします。
繰り返しになりますが、農地の相続といえども、特別な規定はありません。一方で、農業は日本の食料自給率を維持する要でもあります。
そのため、簡単に農地を宅地など、他の用途に転用したり、安易に農業を止めたりできない様に、農地法により、さまざまに規制されています。
例えば、農地法3条(農地の権利移動等)によって、耕作目的のために、売買や贈与により農地の所有権を移転するには、農業委員会、又は、県知事の許可が必要と定められています。許可を受けない農地の売買や、貸借は無効となります。
しかし、農地の所有者の死亡により、農地の相続が発生した場合は、農地法の許可は不要とされています。
これは、相続は承継するという性格であり、一般の売買や貸借のような権利の移転や、設定とは意味合いが異なるため、相続による農地の名義書換に、農地法の許可は必要ないと考えられているためです。
法定相続とは異なる割合で遺産分割した場合でも、農地法の許可は不要です。このため、遺産分割協議によって、農地を特定の相続人一人のものにすることも可能です。
ただし、遺言によって、相続人以外の方が農地を取得する場合は、農地法の許可が必要となりますので注意が必要です。
農地を相続する場合、農地法の許可は不要です。
しかし、少しややこしく思えるかも知れませんが、農業委員会への届出は必要です。とは云え、審査が伴う許可とは異なり、届け出は単に出すだけで良いのです。
この届出は、相続などで農地を取得した本人が、農地取得を知った日から10ヶ月以内に行う必要があります。この期限が設けられているのは、農地の相続が長期間放置されることにより、誰の農地なのか分からなくなってしまう「耕作放棄地」の増加を防止するためとされています。
尚、農地を取得しても届出を怠ったり、嘘の届出をしたりすると、10万円以下の罰金が課せられることもありますので注意して下さい。
<届出の概要>
届出書・・・最寄りの農業委員会の窓口に用意されています。
記載内容
次に、農地の評価方法について見てみましょう。農地はどこにあるのかによって、純農地、中間農地、市街地周辺農地、市街地農地の4種類に区分されます。
そして、純農地と中間農地は「倍率方式」、市街地農地は「宅地比準方式」、又は、倍率方式で評価します。尚、市街地周辺農地は、市街地農地として評価した額の80%で評価します。
以下、概要を下表にまとめてみます。
内容 | 評価方法 | |
---|---|---|
純農地 | 農用地区内にある農地など | 倍率方式 |
中間農地 | 市街地にある農地ではなく、又、純農地にあるような優良な農地でもない農地 | 倍率方式 |
市街地周辺農地 | 農地転用許可を受ければ、宅地等へ転用できる農地 | 市街地農地の評価額の80% |
市街地農地 | 農地転用許可を受けた農地や、市街化区域内にある農地で、農地転用の届出のあった農地 | 宅地比準方式、又は、倍率方式 |
倍率方式・・・路線価が定められていない地域の評価方法で、その土地の固定資産税評価額に、一定の倍率を乗じて計算します。
宅地比準方式・・・その農地が宅地であるとした場合の評価額から、その農地を宅地に転用する場合にかかる造成費に相当する金額を控除した金額により、評価する方法です。
又、農地を相続した場合は、一定の条件を満たしていれば、農地の評価額を大幅に下げて相続税を猶予できる制度があります。
これは、農業を営んでいた親から、相続人である子などが、一定の農地等を相続により取得し、農業を営む場合には、相続人が取得した農地等の価額のうち、農業投資価格による価額を超える部分に対応する相続税額は、その取得した農地等について、相続人が農業の継続や特定貸付を行っている場合に限り、その納税が猶予される制度です。
被相続人(亡くなった親)が所有し、農業を営んでいた農地
亡くなる日まで農業を営んでいた人
相続税の申告期限までに農業経営を開始し、その後も継続して農業経営を行うと認められる人
*農業委員会の証明が必要です。
相続税の申告書に、所定の事項を記載し、期限内に提出します。その際、農地等納税猶予税額、及び、利子税の額に見合う担保を提供し、一定の書類を添付することが必要となります。
市街化区域内の生産緑地 | 相続人が死亡するまで |
農振地区や調整地区 | 申告期限から20年を経過した時、又は、相続人が死亡したときのうちいずれか早い方 |
生産緑地・調整区域農地の両方を所有 | 相続人が死亡するまで |
農地に高い相続税がかかると、農業を続けることが難しくなります。そのため、農地の相続時における評価額が低くおさえられ、且つ、後継者が農家を継ぐ場合は、相続税は猶予されるという特例が設けられているのです。
農地を相続した場合と同じように、生前に、農地を後継者に一括贈与しても、納税が猶予される特例があります。
この制度では、贈与した人が死亡した時点で、贈与した農地を含めて相続税を計算しますので、結果として猶予されていた贈与税は免除されることになります。
この制度の適用を受けるためには、納税猶予額に相当する担保を提供して、「農業委員会の証明書」や、「農地等の贈与税の納税猶予税額計算書」、「農地等の贈与に関する確認書」などの書類を添付した贈与税申告書を提出しなければなりません。
贈与の日まで、3年以上継続して農業を営んでいた個人
贈与者の推定相続人である18歳以上の個人で、3年以上農業に従事し、これからも農業を続けること。農地全部を、一括して贈与すること
これらの要件は、それほど厳しいものではありません。相続税と同じように、贈与税においても、農業の後継者に贈与するならば、税金が猶予されると云うことです。ただ、相続税でも贈与税でも、後継者が農業を止めてしまうと、一気に税金がかかることを忘れてはなりません。
一昔前の家督相続制度のもとでは、長男が後継者となり、遺産分割に伴う争い、いわゆる、争相族などはあり得ませんでした。しかし、現在は状況が違ってきています。
仮に、長男が農家を継ぐため、先祖代々の農地をすべて相続したいと主張しても、必ずしもすんなり決まるとは限らないのです。
特に、市街地農地においてはこの問題が深刻です。というのは、行政としては、食料自給率を維持しなければならない一方で、市街化を推進するという政策もあり、市街地農地を潰しても農業委員会に届出ればよく、事前の許可は必要ありません。
つまり、マンションや一戸建てを建てることが、比較的自由にできるのです。
市街地農地は、宅地やマンション用地として売却すれば、莫大な財産になります。ということで、遺産分割協議でもめてしまうことが少なくないのです。
このような事態にならないように、親は遺言書を作成するか、あるいは農地を生前贈与して、後継者に一括して承継させることが多いのです。しかし、これが又、トラブルの原因となることも少なくないため、十分注意する必要があります。
前述したように、農地の相続に特別な規定はありません。相続法の一般規定が適用されます。
従って、仮に後継者一人に農地を一括して相続させる内容で遺言書を残したとしても、その他の法定相続人が納得しなければ、民法で保障された「遺留分減殺請求」を行うことができます。
遺留分減殺請求とは、相続財産の一定割合を取得することを保障した制度で、配偶者、子、直系尊属(父母等)、つまり、兄弟姉妹以外の法定相続人にその権利があります。
因みに、この権利は遺留分を侵害されたことを知った日から1年以内におこなわなければならず、遺留分を侵害されたことを知らなかったとしても、10年を経過すると時効により消滅します。尚、取り戻すことができる割合は以下の通りです。
相続人 | 遺留分割合 |
---|---|
直系尊属(父母等)のみ | 法定相続分の3分の1 |
配偶者、子 | 法定相続分の2分の1 |
兄弟姉妹 | なし |
相続人 | 相続分 | 配偶者がいない場合 |
---|---|---|
配偶者のみ | 配偶者が全部 | - |
配偶者と子 | 配偶者1/2、子1/2(注) | 子が全部 |
配偶者と直系尊属(父母等) | 配偶者2/3、直系尊属1/3(注) | 直系尊属が全部 |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4(注) | 兄弟姉妹が全部 |
意思表示の方法に関しては、法律上の決まりはなく、遺留分を侵害している者に対して、「遺留分を侵害されているので、返還を求めます」と、遺留分減殺の意思表示を口頭で行うことで足りますし、手紙やメール等で意思を伝えることも可能です。
しかし、これらの方法では、裁判で問題になった場合、証明することが難しいので、確実に証明できる配達証明付内容証明郵便で、意思表示を行うのが良いでしょう。
尚、意思表示が相手側に届いた時点で、侵害された遺留分を限度として、遺留分権利者の所有に属することになり、相手側は返還しなければなりません。
農地に関わらず、相続とは、有形の財産を引き継ぐだけではなく、生き方、考え方、理念、姿勢、信頼、評判など、無形ではあるが、ものすごく価値のある財産を引き継ぐ事でもあります。
換言すれば、相続とは、自信の役割を考え、次世代のために大切に育んでいくことといっても良いでしょう。そのためには、自分の想いが子供らに伝わっているか、いないか、と云うことが、とても重要なことではないでしょうか?
子供は一般的に、親の想いに納得すればそれに従います。遺志がわからなければ、自分の権利を主張します。
もちろん、想いだけですべての人を満足させられる訳ではないでしょう。そのため、相続人同士が争わないように、遺言を書く人も多いのです。
しかし、遺言書を作りさえすれば、争族を防げるという訳でもないことを、既に記載しました。遺言書があったとしても、遺産分割協議が必要になったり、他の相続人の協力が必要になったりするケースが、決して珍しくはないのです。
俗に、「円満相続」に重要なのは、「気持ちの感情」と「お金の勘定」ともいわれます。
単に、農地は後継者にすべて相続させる、等の遺言書を作成するのではなく、「農地は先祖代々受け継いだ、我が家の大切に守らなければならない財産です。近所付き合いやお墓と一緒に、長男に守って欲しい」などの想いを伝える一文を加えたら良いでしょう。これを付言事項といいます。
さらに、後継者以外の相続人を受取人とした生命保険をかけておいたり、金融資産は後継者以外の相続人で分割する旨の遺言書を作成し、前述した付言事項に加え、この金融資産は、コツコツ貯めた貴重な財産であること、兄弟姉妹、仲良く助け合って欲しい旨の想いを書き残すことで、例えその配分が法定相続分と異なったとしても、農地は後継者に渡す事ができ、他の相続人の感情も大分和らぐのではないでしょうか?
農地は、後継者に移転していけば、贈与税も相続税も支払わずに、猶予することができます。
そのためには、大前提として、遺産分割協議でもめないように、生前に農地を相続する後継者決めておくこと、又は、農地を生前贈与しておくこと、そして、「気持ちの感情」と「お金の勘定」に配慮し、想いが十分に伝わる付言事項を記載した遺言書を残すことが、何より重要と思います。
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