東京都内でも人気の住宅地として知られる世田谷区ですが、近年は住宅の老朽化や相続問題などの影響により、空き家の増加が課題となっています。国土交通省のデータによれば、全国的に空き家率は上昇傾向にあり、世田谷区も例外ではありません。
世田谷区は交通の便も良く、商業施設や教育機関も充実していることから、幅広い世代にとって人気のエリアです。しかし、戦後に建てられた戸建て住宅が高齢化により手放されるケースが増え、使われていない家屋=空き家が年々目立つようになっています。
こうした空き家は、以下のような問題を引き起こす可能性があります。
- 建物の劣化による倒壊や火災リスク
- 管理が行き届かないことによる害虫や不審者の侵入
- 周辺住民とのトラブル
本記事では、このような「売りたい」「買いたい」両方のニーズにこたえる形で、空き家売買の方法、制度、注意点などを初心者にもわかりやすく解説します。
【売却したい方向け】世田谷区で空き家を売るには?

世田谷区で空き家を所有していて、「できるだけ高く売却したい」「どんな売却手段があるのかわからない」と悩む方は少なくありません。この章では、世田谷区で空き家を売却するために知っておきたい基本情報と具体的な方法、さらに高額売却のためのポイントを初心者向けにわかりやすく解説します。
世田谷区には空き家バンクがあるのか?
結論からお伝えすると、2025年4月現在、世田谷区は「空き家バンク」のような不動産マッチングサービスを提供していません。
ただし、「世田谷トラストまちづくり」が設置する『空き家等地域貢献活用相談窓口』が存在し、空き家の活用や利活用希望者とのマッチング支援を行っています。空き家バンクのように一般公開されている物件リストはありませんが、所有者と活用希望者の間をつなぐ「地域活用型の相談機能」が用意されています。
この窓口では、以下のような支援が受けられます。
- 空き家の利活用に関する相談
- 活用希望者(地域活動団体など)とのマッチング
- 契約に関する基礎知識の提供
空き家を売る主な手段
空き家を売却するには、いくつかの方法があります。ここでは、それぞれの方法の特徴やメリット・デメリットを簡潔にまとめます。
1. 不動産仲介業者を通じた売却
もっとも一般的なのが、不動産会社を通じて市場に空き家を出す方法です。相場に基づいた価格設定がされ、広く買主を探せます。
メリット
- 市場価格での売却が期待できる
- 広告や交渉などを仲介業者に任せられる
デメリット
- 売却までに時間がかかることもある
- 仲介手数料が発生する(通常は売買価格の3%+6万円+消費税)
2. 空き家買取業者への売却
即現金化したい場合は、空き家買取業者に直接買い取ってもらう方法もあります。
メリット
- すぐに売却・現金化できる
- 修繕や掃除をせずに売却できるケースもある
デメリット
- 市場価格より安くなる傾向がある
3. 地域活用としての貸与・売却
世田谷区では、空き家を**地域活動に役立てる「地域貢献活用モデル事業」**という枠組みも存在します。空き家を売却せずに、地域団体に貸し出す方法も含め、長期的に地域に貢献する道が選べます。
高く売るためのポイント
空き家の価値を最大化するためには、いくつかの準備や工夫が重要です。
1. 空き家の状態を整える
- 建物の清掃・修繕を行うことで印象が大きく変わる
- 庭木の剪定や外観の整備も買い手の第一印象に影響
2. インスペクション(建物状況調査)を活用する
建物の専門的な診断を行う「インスペクション」を事前に実施することで、購入希望者に安心感を与えます。調査内容は劣化状況や構造安全性などを含みます。
項目 | 内容 | 費用の目安 |
---|---|---|
インスペクション | 建物の劣化状況や補修の必要性を診断 | 約5〜7万円 |
シロアリ検査 | 床下に害虫がいないか調査 | 約1〜2万円 |
3. 売却時期を見極める
不動産は春(3〜4月)や秋(9〜10月)に動きやすいと言われています。このタイミングを狙うことで、購入希望者が集まりやすくなります。
4. 専門家との連携
税理士や司法書士などと連携することで、相続や登記などの法的問題にも対応しやすくなります。
世田谷区に住む際の地域特性・注意点
空き家を売却するにあたって、買主がその地域に住むことを想定して、地域の特徴や注意点を整理しておくことも重要です。
- 地域によって再建築不可の物件がある
→ 前面道路が建築基準法に適合していない場合、再建築できない可能性あり。必ず確認を。 - 敷地が狭小なケースが多い
→ 二世帯・ファミリー向けには不向きな場合も - 騒音・交通量の多さ
→ 幹線道路沿いは住環境に影響あり
こうした情報を事前に整理し、不動産業者と共有しておくことで、スムーズな売却につながります。
世田谷区で空き家を売却するには、空き家バンクのような全国的な仕組みではなく、地域に根ざした「相談窓口」や「地域貢献型の活用」を活用するのがポイントです。高額で売却するには、建物の整備や診断、タイミングを意識することが非常に重要です。次章では、空き家を「購入したい方」に向けた情報を解説していきます。
【購入したい方向け】世田谷区で空き家を買うには?

世田谷区で空き家を購入して活用したいと考えている方のために、「どこで空き家を探すのか」「購入後に活用できる助成金制度はあるのか」といったポイントを、初心者にもわかりやすく解説します。
世田谷区の空き家はどこで探せる?
民間の不動産サイトで探す
世田谷区の空き家は、一般的な不動産ポータルサイトで探すことができます。具体的には以下のようなサービスが活用できます。
- SUUMO(スーモ)
- アットホーム
- LIFULL HOME’S
- 不動産ジャパン
これらのサイトでは、「中古戸建て」「古家付き土地」「再建築不可」などのキーワードを活用することで空き家物件にアクセスしやすくなります。
世田谷区の「空き家等地域貢献活用相談窓口」とは?
世田谷区では、空き家や空室などを地域資源と捉え、これを活用して地域課題の解決につなげることを目的とした「空き家等地域貢献活用相談窓口」を設置しています。この相談窓口は、一般財団法人 世田谷トラストまちづくりが運営しており、以下のような活動を行っています。
- 地域貢献を目的として空き家等を活用したい団体と物件オーナーとのマッチング
- 活用に関する助成制度の案内と応募受付
- 活用に向けたゼミナールやフォーラムの開催
これはいわゆる「空き家バンク」ではなく、地域貢献活用に特化した相談・マッチング窓口です。空き家を購入して地域活動に活かしたい人にとって、強い味方となる存在です。
地域貢献を目的とした空き家購入には助成制度がある
世田谷区では、地域課題の解決やコミュニティ活性化を目的とする空き家活用に対して、最大300万円までの助成金を提供する制度を設けています(2025年現在)。
助成制度の概要
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 | 地域貢献活動を5年以上継続できる団体等 |
対象物件 | 世田谷区内の空き家・空室・空き部屋(戸建・マンション等) |
対象費用 | 改修工事費(200万円まで)+耐震改修費(100万円まで) |
最大助成金額 | 300万円 |
活用の目的 | 地域交流、コミュニティ再生、地域課題の解決など |
活用企画の条件 | 自主的・継続的に行われる、地域に根ざした活動 |
応募条件(団体) | 政治・宗教を目的としない、収益の分配を行わない、反社会的勢力でないこと等 |
申請方法 | 書類持参(郵送・Eメール不可)、事前相談と現況確認が必要 |
応募受付場所 | 世田谷トラストまちづくり(松原6-3-5 梅丘分庁舎1階) |
問合せ先 | 電話:03-6379-1621(平日8:30〜17:00) |
※令和7年以降のアナウンスは未だされていないようです
活用対象となる物件の条件
- 建築関係法令に適合している、または助成事業終了までに適合する予定であること
- 新耐震基準を満たすか、改修により満たすこと
- 建築確認済証、もしくはそれに準ずる書類があること
- 都市計画事業に指定されていない土地上の建物であること
活用対象となる企画の例
- 子育て世代向けの地域拠点
- 高齢者向けの居場所づくり
- 地域イベントや交流を促進するスペース
- 学習支援やフードバンク活動の拠点
こうした「まちづくり」を意識した企画であることが求められます。単なる住宅としての利用では助成対象外になるため、目的を明確にすることが重要です。
活用希望者としての注意点
個人購入は対象外
この制度は個人が居住目的で購入するケースは対象外です。団体であること、そして地域貢献活動を行うことが前提となります。
助成対象の審査がある
応募したからといって必ず助成が受けられるわけではありません。地域貢献活用事業審査会にてプレゼン審査が行われ、選定されてはじめて助成金交付が可能となります。
世田谷区に住む際の生活面での注意点
- 保育園や学校の待機児童問題:特に人気エリアでは入園が困難な場合も
- 古い住宅街の道路幅が狭い:車の出入りに制限がある地域も
- 高低差のある地形:坂道が多い地域では高齢者の移動に配慮が必要
- 自治会や町内会の参加:地域コミュニティとのつながりが重視される文化が根付いている
世田谷区で空き家を購入して活用するには、一般的な不動産購入とは異なるアプローチが求められます。特に「地域貢献」をキーワードにした制度が充実しており、単なる住宅利用とは違った可能性が広がっています。
地域活動に関心がある方、まちづくりに貢献したい団体にとって、世田谷区の空き家等活用は非常に魅力的な選択肢と言えるでしょう。まずは「空き家等地域貢献活用相談窓口」に相談し、具体的な活用アイデアを育ててみてください。
売却・購入どちらにも共通する注意点

空き家の売却・購入を検討する際には、どちらの立場でも共通して気をつけるべきポイントがいくつかあります。特に、法的な問題やコスト、地域特有の事情を理解せずに進めてしまうと、後々トラブルや想定外の出費に繋がる可能性があります。この章では、世田谷区で空き家を取引する上での注意点を、初心者の方にも分かりやすく整理してご紹介します。
権利関係(登記・共有名義など)の確認
空き家の売却・購入で最も重要なポイントの一つが、登記情報の正確さと所有者の権利関係です。
例えば、売主が空き家の単独名義ではなく共有名義の場合、全ての共有者の同意がなければ売却できません。また、相続登記がされていない空き家では、法的に所有者が不明確なため売却手続きに進めないこともあります。
確認すべきポイント:
- 不動産登記簿で所有者の名義を確認
- 相続されている場合は登記が完了しているか確認
- 共有者がいる場合は、事前に同意を得ておく
固定資産税・都市計画税の負担
空き家を所有していると、**毎年「固定資産税」や「都市計画税」**といった税金が課されます。購入後にこの費用負担を把握していないと、後悔するケースもあります。
また、特定の空き家(いわゆる「特定空家」)に指定されると、土地の税優遇がなくなり、税額が最大6倍に増加するケースもあるため注意が必要です。
税の種類 | 内容 | 概算費用の目安(世田谷区の住宅地の場合) |
---|---|---|
固定資産税 | 評価額×1.4%が基本税率 | 年間10万〜30万円前後 |
都市計画税 | 評価額×0.3%が上限税率 | 年間2万〜10万円前後 |
特定空家指定後 | 税優遇(小規模住宅用地特例)が外れ、土地評価額の6倍課税の可能性あり | 条件次第で年間50万円超も |
特定空家とは…「倒壊などの危険」「著しく不衛生」「景観を損なう」などの状態にある空き家と判断されたもの。
建築制限や再建築不可物件への注意
購入希望者が特に注意すべきなのが、「再建築不可」の物件です。これは、建築基準法で定める道路に接していない土地に建っている建物で、建て替えができない、あるいは制限される可能性があるものです。
また、世田谷区内では地区計画や用途地域によって建ぺい率・容積率・高さ制限などの規制が厳しいエリアも存在します。将来的なリフォームや建て替えを前提に購入する場合、必ず事前に確認が必要です。
空き家周辺の環境・地域事情の確認
世田谷区と一口に言っても、交通の便・治安・近隣住民の年齢層・商業施設の有無など、地域によって大きく特色が異なります。特に空き家の場合、長期間放置されていたことにより近隣住民との関係が悪化しているケースもあります。
購入・売却時のチェックポイント:
- 最寄り駅からのアクセス時間と道のり
- 夜間の治安や街灯の有無
- ゴミ出しルールや自治会の活動状況
- 隣地との境界やフェンスの状態
インフラ整備・老朽化の確認
空き家は長期間使用されていないことが多く、上下水道・電気・ガスなどのインフラが使用できない、または老朽化している可能性があります。
内覧時には以下の点も確認しておきましょう:
- 給水・排水管にサビや詰まりはないか
- 屋根や外壁に雨漏り・ひび割れがないか
- シロアリ被害や基礎の劣化の有無
空き家の売買には、一般の住宅取引以上に多くの注意点があります。特に権利関係・税金・建築制限・地域性・インフラ状況といった要素は、見逃すと後悔するリスクが高いため、専門家への相談や行政のサポート窓口の活用をおすすめします。
世田谷区では、【空き家等地域貢献活用相談窓口】というサポートも用意されています。地域貢献型活用や売却・利活用に関してもアドバイスを受けられますので、不安な場合はまず相談してみるのも良いでしょう。
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まとめ
世田谷区で空き家の売却や購入を検討している方に向けたガイドをお送りしてきましたが、いかがでしたか?
現在、世田谷区では空き家バンクは運用されていませんが、「空き家等地域貢献活用相談窓口」が設置されており、空き家の活用やマッチング支援を行っています。
売却を希望する方は、不動産業者や買取業者の活用に加え、地域貢献型の貸与も選択肢になります。高額売却のためには、管理状況や住宅診断などがカギです。一方、購入希望者は民間サイトや相談窓口を通じて物件を探せます。また、地域活動を伴う空き家活用には、世田谷区独自の助成制度も利用可能です。売買ともに、まずは専門窓口への相談がスムーズな第一歩となります。
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