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投稿日:2017年05月31日 更新日:2021年03月30日
ゆーすけ |片付け部編集長
片付けが好きで、妻を巻き込んで毎週断捨離を行っています。仕事でも遺品整理、ゴミ屋敷、生前整理、不用品回収、特殊清掃の現場に行き、プロの技を学んでいます。片付けをしたい方にとって有益な情報をお伝えいきたいと思っています。
遺言書と一言で言っても、その作成方法は一つではありません。「自筆証遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3種類です。
この3種類は普通方式遺言と呼ばれています。いずれも民法で定められており、それぞれ記載方法が法定されています。
つまり、自由に好きな方法で記載してはいけないのです。
この3種類の作成方法からどれを選択しても問題はありませんが、記載方法や気を付けるべきポイントが異なります。
今回は自分一人で作成することができる自筆証書遺言の書き方について説明いたします。
私には相続してもらうような財産もない普通の家庭だから、遺言なんで必要ないと思われていませんか?
相続する財産が何もないというご家庭はごく少数だと思います。相続の対象から外れるものは、勲章、年金など被相続人の一身に専属したものに限られます。
そのほか間違いやすいものとして、死亡保険金も相続の対象とはなりません。一見すると相続の対象となりそうなものですが、毎月支払っている保険金の対価として指定された受取人がそれを手にする固有の権利を得ていることが理由となります。
端的に述べますと、自宅にあるご自身の物、ご自身名義の財産はすべて相続の対象となります。
相続発生後、それら財産の帰属をめぐり家族内で話し合いが行われることでしょう。
被相続人が一人しかおらず、争いごとに発展する可能性がないのであれば問題ありませんが、複数名いる場合、そこには常にトラブルへ発展する危険性が付きまといます。そのトラブルを防止する役割を担うのが遺言です。
遺言書は法定されていますから、相続人はその遺言書に従う義務があります。遺言書さえあれば、家族内での無用な争い事を避けることができるのです。
このようなトラブル防止の意味以外にも、自身の介護を長いこと続けてくれた息子Aにより多くの財産を残したい、そう思った際にも遺言は効力を有します。
このような前向きな利点もございますから、是非作成してみてください。
冒頭でも述べたように、遺言には「自筆証遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3種類があります。
それぞれの特徴を簡単に分けると、以下のとおりとなります。
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
---|---|---|---|
法律 | 民法968条 | 民法969条 | 民法970条 |
手数料 | なし | 16,000円 | 11,000円 |
記載者 | 本人 | 公証人 | 本人・代筆も可(自筆ではなくパソコンも可能) |
公証人 | 不要 | 2名以上 | 2名以上 |
保管者 | 本人 | 公証役場 | 本人 |
遺言の存在 | 秘密にできる | 秘密にできない | 秘密にできない |
遺言の内容 | 秘密にできる | 秘密にできない | 秘密にできる |
検認 | 必要 | 不要 | 必要 |
遺言無効の可能性 | あり | なし | あり |
いかがですか。どれが作成しやすいかと言ったら、手数料がかからず、何か届け出をする必要もない自筆証書遺言でしょう。遺言を作成しようと考えられたなら、まずは心理的圧迫感の少ない自筆証書遺言を検討してみましょう。
注)秘密証書遺言は公証人が必要なため、その存在は秘密にすることはできません。ただ、その内容は公証人に見せませんから、その内容が秘密となります。
それでは自筆証書遺言を作成する前に、まずは以下のものを用意してください。
作成に必要な物が揃いましたら、自筆証書遺言書を作成に入りましょう。
いざ自筆証書遺言書を作成しようと考えても、どうやって何を記載すれば良いか分からない方のために、どのような内容にすれば良いのか、相続人を誰にするのかなどをご説明いたします。
まずは相続財産を把握しなければなりませんから、上記で集めた各種財産をまとめます。可能であればパソコンのEXCELなどでまとめた方が簡単に見やすくまとめることができます。
この段階では財産を把握することが目的ですから、銀行名、株式銘柄、金額を記載する程度で構いません。すべて記載したら、次は銀行や株式、不動産など種類ごとに銀行名・支店名・口座番号、家屋番号・土地の地番を詳細に記載してください。
どの土地なのか、銀行口座なのかが第三者の目から見て明らかでなければ、せっかく作成した遺言書が無意味なものとなってしまう可能性がありますので、正確に記載してください。
相続財産を把握したら、次はいったい誰が相続人になるのかを確認してください。一般的な状況は下記の通りとなります。(夫婦の両親および兄弟姉妹は健在していることを前提としております)
この場合、まず配偶者は必ず相続人となります。死亡者の配偶者が生存している場合、配偶者は必ず相続人となります。
次に相続人となるのは子供2名です。この子供間に順位の優劣はありません。
長男だから順位が上で、末っ子だから下ということはありません。年の離れた兄弟で、40歳の兄と5歳の妹も同じ相続順位となります。
よって、この家庭では配偶者および子供2名が相続人となります。
相続財産はすべて夫婦が相続します。よって、夫婦2名が相続人となります。
配偶者及び死亡者の両親が相続します。配偶者の両親は相続人となりません。
仮に両親が他界している場合は、死亡者の兄弟姉妹が相続します。
兄弟姉妹が死亡している場合は、その兄弟姉妹の子供が相続(代襲相続)します。
その子供も死亡している場合は、相続人はいなくなり、すべて配偶者が相続することになります。
子供2名がすべて相続します。この場合、死亡者の両親が健在であっても、子供2名がすべてを相続します。
子供が亡くなっている場合は、孫が相続します。仮に子供Aと子供Bがおり、子供Aが死亡している場合、相続人は配偶者と子供B及び子供Aの子供(孫)となります。
以上代表例をご説明いたしましたが、相続人となる順位を説明すると、下記の通りとなります。
相続人の死亡などで相続人が居ない時、相続順位の権利が以下のように継承されます。
相続人の順位について確認しましたが、実は遺言において指定できる相続人はこの遺言者だけではないのです。
下位の順位の人や、第三者(友人・知人)にも遺言で相続(正式には遺贈。以下遺贈とする)することができます。それではすべての財産を誰にでも相続(遺贈)することができるかといえば、それもできません。
先ほど説明した相続人は、第二順位の相続人までは遺留分と呼ばれる最低限決められた財産分与の割合があります。この遺留分を超える相続を指定してしまうと、トラブルの原因となりますから、できるかぎり遺留分を侵害しないことをお勧めいたします。
なぜ「できるかぎり」かといいますと、仮に相続人が遺留分を侵害された財産分与を受け入れた場合、その相続は有効となるからです。
しかし、それを受け入れず、他の相続人が遺留分の主張を認めない場合、遺留分減殺請求を裁判所に申し立て、その遺留分を取り戻すことが可能です。
救済措置はございますが、裁判という強硬手段にでており、その当事者間においてわだかまりが生じますから、できるかぎり遺留分を侵害しない遺言書の作成に努めてください。
遺留分は法定(民法第1028条~第1044条)されており、その割合を把握することは容易です。
配偶者と第一順位 | 配偶者が1/4、第一順位が1/4の合計1/2 |
---|---|
配偶者と第二順位 | 配偶者が1/3、第二順位が1/6の合計1/2 |
配偶者と第三順位 | 配偶者が1/2、第三順位はなしの合計1/2 |
配偶者のみ | 配偶者が1/2 |
第一順位のみ | 第一順位が1/2 |
第二順位のみ | 第二順位が1/3 |
第三順位のみ | なし |
となりますから、第二順位のみ以外であれば、財産の半分までは第三者に遺贈することができますし、特定の相続人に対し高い割合で相続することも可能です。
以上の割合を理解して相続財産の配分を考えましょう。
自筆証書遺言は自分一人で遺言書の作成を完結できる利便性がある反面、必要な知識なしに作成してしまうと遺言としての効力がない無効な遺言書となってしまう危険性があります。
もちろん、相続人が遺産分割協議において無効な遺言書の内容に従うことは可能ですが、せっかく相続人同士で争わないように遺言書を作成したのに、それが無効となり遺産分割協議にまで至ってしまっては本末転倒です。
ですから、正しい自筆証書遺言書の作成方法を学び、有効な遺言書の作成に努めてください。
自筆証書遺言書を作成にあたり、そもそもその作成者に作成能力があるのかが問われます。
例えば被後見人であったり、認知症などによって意思能力がない時に作成した遺言書は無効となります。
意思能力があるうちに作成しましょう。
その他年齢制限があり、15歳未満の者も作成することができません。
パソコンやワープロなどの機械を用いて作成した遺言書は無効となります。その他、他人が代筆した場合も無効となります。
どうせ誰にもバレないだろうと思い代筆で作成しても、筆跡鑑定を行えば簡単にバレますから、必ず自分で作成してください。家族があなたの筆跡鑑定に必要な資料を集めることは大変容易です。
意思能力を有しているが、もはや自筆で作成することができないという方は、自筆証書遺言書にこだわらず、そのほかの遺言方法である公正証書遺言や秘密証書遺言は代筆による作成が可能ですから、こちらの方式を選択してください。
年月日を記載しなければ有効となりません。年月や、年月吉日では無効です。
その理由は、同一人物が記載した複数の遺言書があり、その内容に矛盾がある場合、その矛盾する部分は作成日付が最も新しい遺言書に準じるからです。
あいまいな日付ではどの遺言を有効に判断すればよいのかが判断できません。
遺言書は自分の財産の相続の方法を明らかに示すものですから、一人で作成しなければなりません。
夫婦だからと二人の連名で作成した場合、その内容は無効となります。必ず一人で作成してください。
氏名記載後、印鑑も忘れずに押印してください。この印鑑は認印でも構いませんが、自らが作成したという証拠能力を高めるためにも、実印を押された方が良いでしょう。
「財産をAに相続する」という記載がされた遺言書があった場合、これはいったい何を相続するのか分かりません。財産のすべてをAに相続させるつもりなのか、一部なのか、一部であればどの財産が対象になるかが不明確です。
仮にAが不動産をこの遺言書をもとに所有権移転登記しようと思い、法務局へ行っても遺言趣旨不明により申請を受け付けてもらえないでしょう。相続人間で遺言書の解釈がまとまらず、遺産分割の内容がまとまらない場合、最終的には家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります。
その調停でもまとまらず不成立となった場合、審判手続きに移行し、家庭裁判所が分割を決定することとなります。調停と審判の違いは、調停は当事者の合意が必要なのに対し、審判は強制力があるというところです。
せっかく遺言書を作成しても、その内容が不明確であるがゆえに裁判にまで発展する可能性がありますから、作成する以上は具体的にどの財産を誰に相続するのかを記載してください。すべての財産を事細かに記載するのが面倒であれば、「本遺言書に記載のないその他一切の財産を○○に相続させる」というような条項を入れておけば相続人が迷わずに済みます。
ここまで自筆証書遺言書の書き方について述べてきましたが、記載すべき事項や注意点が分かっても、どのように作成すれば良いのか想像できないと思います。
ですから、ここで自筆証書遺言書の例文をご紹介いたします。
第1条 下記の不動産は妻の日本花子(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。
1. 家屋
所在 | ○○県○○市〇丁目〇番地○号 |
家屋番号 | 〇番 |
種類 | 居宅 |
構造 | 木造 |
床面積 | 1階〇㎡ 2階〇㎡ |
2. 土地
所在 | ○○県○○市〇丁目 |
地番 | 〇番地〇号 |
地目 | 宅地 |
地積 | 〇㎡ |
第2条 下記の株式全部を、子日本太郎(平成〇年〇月〇日生)に相続させる。
第3条 下記の預金債権を、子日本丸子(平成〇年〇月〇日生)に相続させる。
第4条 下記の不動産を、甥(長男日本一郎の長男日本大和(平成〇年〇月〇日生))に遺贈する。
1. 家屋
所在 | ○○県○○市〇丁目〇番地○号 |
家屋番号 | 〇番 |
種類 | 居宅 |
構造 | 木造 |
床面積 | 1階〇㎡ 2階〇㎡ |
2. 土地
所在 | ○○県○○市〇丁目 |
地番 | 〇番地〇号 |
地目 | 宅地 |
地積 | 〇㎡ |
第5条 第1条から第4条まで記載のないその他一切の財産を次男日本二郎(平成〇年〇月〇日生)に相続させる。
第6条 この遺言の遺言執行者として、長男日本一郎を指定する。
平成〇年
〇月〇日
遺言者 日本一郎 印
以上の様に具体的な内容を記載すれば、自筆証書遺言書は有効なものとなります。
有効な自筆証書遺言書を作成したら、どこに保管すれば良いのでしょうか。保管すべき場所というのは法律で定められておらず、基本的にどこに保管しても構いません。
しかし、遺言作成者しか分からない場所に保管し、相続開始時に発見されなくては意味がありません。銀行の貸金庫に保管する方法もありますが、これも存在が相続人に知られていなければ意味を成しません。
そこで、エンディングノートを作成し、そこに遺言書の存在及び保管場所を記載されることをお勧めいたします。労力をかけて自筆証書遺言書を作成された方なら、エンディングノートにも興味があるのではないでしょうか。
エンディングノートとは、人生の終盤に起こりうる万一の事態に備えて、介護や葬儀の方法や、財産のリスト、家族への伝言など様々なことを記載するノートの事です。
遺言とは違い、法定されているわけではなく、書き方についても特に決められたものはありません。ですから、自由に記載することができます。
書き方が分からない方はエンディングノートは市販されていますから、これを購入しても良いでしょう。自身の負担にならない方法で作成してください。
遺言を作成しない方は、このエンディングノートに財産について記載することがありますが、法的な強制力はありませんから、誰も従う義務はありません。おそらく、有利に財産分配された相続人と不利な財産分配をされた相続人との間でトラブルになってしまうのではないでしょうか。
上記の理由からエンディングノートを利用しての財産分配はお勧めいたしません。財産分配を指定したいのであれば、遺言書を作成すべきです。
遺言書については、エンディングノートの1ページ目など分かりやすい部分に、遺言書の存在及び保管場所を記載しておけば問題ないでしょう。
今回は3種類ある遺言書の中から自筆証書遺言書の作成方法についてご説明いたしました。
自筆証書遺言書は費用がかからず自分一人で作成することができるため、比較的に容易に作成に取り掛かることができます。
しかし、ご説明したとおり、最低限抑えるべきところを抑えておかなければ、その自筆証書遺言書は無効となり、法的強制力を持たないただの紙になってしまいます。
一般的な財産を相続する際の記載方法は例文を掲載しておりますが、相続の対象は船舶やゴルフ会員権、そして子供の認知まで多岐にわたります。
複雑な内容の遺言を残したいとお考えの方は、相続を専門に扱っている弁護士または行政書士にご相談されると良いでしょう。
自筆証書遺言書の作成がスムーズに行われますことを心よりお祈り申し上げます。
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