地方移住に関心のある方の中には、「移住すると家がもらえる」という話を聞いたことがあるかもしれません。
これは単なる噂ではなく、実際に家や土地を無償で提供する自治体が存在 しています。
なぜこのような制度があるのかというと、地方の多くの地域では 人口減少 や 空き家の増加 が深刻な問題となっているからです。
その対策の一環として、移住者に住宅や土地を提供し、地域の活性化を図る取り組みが進められています。
しかし、 「無料でもらえる」=「すぐ住める」わけではない という点には注意が必要です。
多くの場合、 リフォームが必要 だったり、 一定の条件を満たすことが求められる ため、制度の詳細をよく理解しておく必要があります。
本記事では、実際に住宅や土地の無償譲渡を行っている自治体の制度を詳しく紹介 するとともに、移住に関するポイントを解説します。
「地方で新しい暮らしを始めたい」「なるべく初期費用を抑えたい」と考えている方は、ぜひ参考にしてください。
家や土地の無償譲渡とは?
「無償譲渡」とは、自治体が所有する空き家や土地を、特定の条件を満たす人に無料で提供する制度のことです。通常、不動産の取得には高額な費用がかかりますが、この制度を活用すれば、住宅や土地をタダで手に入れることができます。
無償譲渡が行われる主な理由は、地方における人口減少・過疎化対策や空き家問題の解消です。多くの地方自治体では、住民を増やし、地域を活性化するために、移住者に対して住居を無償提供しています。
ただし、無償譲渡だからといって、完全にコストゼロで住めるわけではありません。多くの場合、以下のような条件が設定されています。
無償譲渡の主な条件
自治体ごとに異なりますが、無償譲渡を受けるためには、以下のような条件を満たす必要があります。
条件 | 詳細 |
---|---|
移住・定住の意思 | 一定期間(例:20年以上)移住して住み続けること |
リフォーム費用の負担 | 多くの物件は改修が必要で、費用は自己負担 |
地域貢献活動への参加 | 地域のイベントや活動に積極的に関与すること |
年齢や家族構成の条件 | 若年層・子育て世帯が優遇されるケースが多い |
事業・農業の開始 | 一部の自治体では農業や起業が条件となる場合も |
なぜ無償で提供されるのか?
自治体が家や土地を無料で提供する背景には、いくつかの理由があります。
1. 人口減少と空き家問題の解決
日本では、地方の人口減少が深刻な問題となっています。特に若者が都市部へ流出し、高齢化が進んだ地域では、空き家が増え続け、管理されないまま放置されるケースも多くなっています。この問題を解決するため、自治体が移住者を募集し、空き家を有効活用しようとしています。
2. 地域の活性化
移住者が増えれば、地域の学校や商店、公共サービスの存続が可能になります。また、地域の労働力を確保することができ、地域経済の活性化にもつながるため、自治体にとって大きなメリットがあります。
3. 自治体の財政負担の軽減
空き家は放置されると老朽化が進み、撤去や管理のために自治体が費用を負担する必要があります。しかし、移住者に家を無償譲渡すれば、管理コストを削減できるだけでなく、移住者が住宅を改修することで新たな価値が生まれます。
無償譲渡と「空き家バンク」との違い
「空き家バンク」とは、自治体が運営する空き家情報を集約したデータベースです。全国の空き家情報を提供し、移住希望者と売主・貸主をマッチングする役割を担っています。
項目 | 無償譲渡 | 空き家バンク |
---|---|---|
物件の提供形態 | 無料 | 賃貸または売買 |
主な対象者 | 条件を満たした移住希望者 | 一般の移住希望者 |
修繕費の負担 | 自己負担が基本 | 自治体や貸主による補助がある場合も |
制度の目的 | 移住促進・空き家活用 | 空き家の流通促進 |
空き家バンクを通じて提供される物件は、賃貸や売買が中心であり、必ずしも無償で提供されるわけではありません。一方、無償譲渡は「条件を満たせば、家や土地を無料で受け取れる」という点が大きな特徴です。
無償譲渡を受ける際の注意点
無償で家を手に入れられるからといって、安易に申し込むと後悔することもあります。以下のポイントを事前に確認しておきましょう。
-
修繕・リフォーム費用を考慮する
- 多くの物件は築年数が古く、水回りや屋根などに大規模な修繕が必要なケースが多い。
- 修繕費用は数百万円以上かかる場合もあるため、費用のシミュレーションを行うことが重要。
-
生活環境をチェックする
- 買い物施設、病院、学校などの生活インフラが整っているか。
- 自家用車が必要か、公共交通機関が利用できるかを確認。
-
補助金制度を活用する
- 自治体によっては、移住者向けのリフォーム補助金や生活支援金が用意されている場合もある。
- 「移住支援金」「空き家改修補助金」などのキーワードで調べると良い。
-
地域との相性を考える
- 地域によっては、移住者に対するコミュニティの受け入れ方が異なる。
- 事前に自治体や地域住民との交流会に参加し、移住後の生活をイメージすることが大切。
無償譲渡制度は、「タダで家がもらえる」という魅力的な制度ですが、実際には修繕費や定住条件など、クリアすべきハードルもあります。
しかし、自治体によってはリフォーム補助金や生活支援制度が用意されているため、上手に活用すれば、コストを抑えながら地方移住を実現することが可能です。
次の章では、実際に無償譲渡を行っている自治体とその制度の詳細を紹介します。あなたにピッタリの移住先を見つける参考にしてください!
無償譲渡を行っている自治体一覧と詳細
ここでは、家や土地を無償で譲渡している自治体をいくつか紹介します。それぞれの自治体で提供内容や応募条件が異なるため、詳細をよく確認して、自分に合った移住先を見つけましょう。
宮城県七ヶ宿町
無償譲渡の内容
七ヶ宿町では、新築の戸建て住宅に入居でき、20年間住むと土地と建物が無償で譲渡されます。
条件
- 地域活動に積極的に参加できる40歳までのご夫婦で中学生以下のお子さんがいる世帯
- 七ヶ宿町に移住してくる方
- 申し込み後、町と協議のうえ譲渡が決定
費用の目安
家賃は月39,000円で 敷金として家賃3ヶ月分がかかります
公式情報
茨城県境町
無償譲渡の内容
境町では、町内の家と土地を無償譲渡する制度があります。これは25年賃貸物件として住み続けると土地と家がもらえるというものです。
条件
- 子育て世帯もしくは新婚世帯
- 移住後、地域活動へ積極的に参加することが望ましい
費用の目安
月々の家賃を所得に応じて決められた金額で支払う(52,000~70,000円くらい)
公式情報
東京都奥多摩町
無償譲渡の内容
奥多摩町では、手放したい物件を登録する制度“0円空家バンク”を開始しています。東京都内でありながら、自然豊かな地域で暮らすことができます。
条件
特になし
費用の目安
契約や登記、修繕にかかる必要は自己負担。町はマッチングするだけなので、実際の現地訪問や契約は当事者同士で行う必要がある。
公式情報
大分県宇佐市
無償譲渡の内容
宇佐市では、市への移住・定住を目的とした宇佐市定住促進住宅用地の無償貸付け及び無償譲渡を希望する方を募集しています。
条件
- 定住促進住宅用地を15年間、無償貸し付け
- 賃借契約締結後、契約日から原則1年以内に住宅の建築着工、及び完成後は居住(住民登録)
- 居住(住民登録)から10年を経過した後、貸付の契約期間(15年)内に譲渡申請書を提出いただき、土地の無償譲渡を決定
費用の目安
住宅の建築費用は自己負担(あくまで土地のみを無償で貸し付け&譲渡)
公式情報
富山県上市町
無償譲渡の内容
上市町では、移住者を増やすために空き家を無償譲渡しています。ただし、リフォームが必要な物件が多いため、DIYが得意な人に向いています。
条件
特になし
費用の目安
契約や登記、修繕にかかる必要は自己負担。町はマッチングするだけなので、実際の現地訪問や契約は当事者同士で行う必要がある。
公式情報
北海道白糠町
無償譲渡の内容
白糠町では、白糠町では本町への移住・定住を希望されるかたの住宅建築を支援するため、町有地を無償で提供しています。新しく家を建てたい人にも向いています。
条件
- 町から提供された町有地に住宅等を新築して10年以上居宅するかた
- 町税等の未納がないこと
費用の目安
提供された土地に住宅を建築する費用は自己負担
公式情報
北海道木古内町
無償譲渡の内容
新道地区の町有地(定住用地)に住宅を建設し定住する方に対して、住宅の敷地となる土地を無償提供しています。
条件
- 定住用地に住宅を建設し居住(住民登録)することを確約できる方が対象
- 住宅を建てることが条件
費用の目安
住居を立てる費用は自己負担
公式情報
自治体探しのポイント
今回、筆者が家や土地を無償譲渡する自治体を探してみての「自治体探し」のポイントとしては、「根気強く探すこと」「地方であればあるほど機会があること」の2点でした。
「家や土地がもらえる」という制度は非常に魅力的なので、応募者多数で締め切られてしまうことが多いようです。特に首都圏に近い地域であればあるほど、競争倍率が高くなっている印象でした。
家のことなので即断・即決は難しいかもしれませんが、意思決定にはある程度のスピード感が求められるのは事実だと思いましたし、好みの物件が見つかるまでは根気強く探す必要があるのを感じました。
また、首都圏から離れれば離れるほど、機会が多くなるというのも事実です。やはり首都圏に近いとそれだけ便利という事になりますので、わざわざ無償譲渡しなくても居住したい人がいます。
一方で地方になればなるほど、住みたい人の人口は減っていきますので、「無償譲渡」といった魅力的な方法で移住者を募る必要があるという事です。
このような前提のもとで、ぜひ自分にあった好みの物件を探してみるとよいでしょう!
無償譲渡を受ける際のポイント
無償で家や土地を譲り受けられる制度は魅力的ですが、実際に応募する際には注意すべき点がいくつかあります。ここでは、スムーズに手続きを進め、移住後の生活を快適にするためのポイントを解説します。
事前に自治体へ問い合わせる
無償譲渡の制度は自治体ごとに異なり、募集の有無や条件が変更されることがあります。そのため、気になる自治体があれば、まず公式ホームページを確認し、直接問い合わせることが重要です。
問い合わせる際のポイント:
- 現在、募集を行っているか
- 必要な応募条件や書類
- 住宅の状態(修繕が必要かどうか)
- 契約後の義務(一定期間の定住義務など)
多くの自治体では、事前相談を受け付けており、移住希望者の質問に応じています。現地での見学が可能な場合もあるので、実際に足を運んで環境を確認するのもおすすめです。
住宅の修繕費用を考慮する
多くの無償譲渡住宅は、築年数が古く、修繕が必要なケースがほとんどです。譲渡自体は無料でも、住むためにはリフォームが必要になることが多いため、事前に費用を見積もっておきましょう。
修繕費用の目安
修繕項目 | 費用の目安 |
---|---|
屋根の修理 | 50万円~200万円 |
外壁の補修 | 30万円~150万円 |
水回り(キッチン・トイレ・風呂) | 50万円~300万円 |
床・壁の張替え | 10万円~100万円 |
電気・配管工事 | 30万円~150万円 |
※費用は目安であり、物件の状態によって変動します。
また、リフォームには自治体の補助金が活用できる場合があります。例えば、空き家再生補助金や移住促進助成金を利用すれば、リフォーム費用の一部が補填されることもあります。事前に自治体に確認し、利用できる制度があるかをチェックしておきましょう。
移住者向けの補助金制度を活用する
無償譲渡の住宅をもらう際、自治体によっては移住支援金や生活支援の補助金を用意していることがあります。以下のような制度があるか調べておくと、移住後の負担を軽減できます。
よくある移住支援制度
支援制度 | 内容 | 例 |
---|---|---|
住宅改修補助 | 修繕やリフォーム費用の一部補助 | 50万円まで補助など |
移住支援金 | 移住者に現金支給 | 10万円~100万円程度 |
子育て支援 | 出産・育児関連の助成金 | 保育料無償化など |
仕事支援 | 起業・就職支援 | 空き店舗活用補助金など |
自治体によっては、リモートワーク支援や農業・漁業支援を行っている場合もあります。希望する生活スタイルに合った補助制度があるか調べ、積極的に活用しましょう。
移住後の生活環境を考える
無償譲渡の住宅がある地域は、都市部とは異なる生活環境であることが多いです。事前に移住後の生活をイメージし、以下の点をチェックしておくと、より安心して移住を進められます。
生活インフラの確認
- 最寄りのスーパー、病院、学校はどこか?
- 交通手段は?(車が必須か、バス・電車は利用できるか)
- 冬の気候や災害リスクは?
仕事の確保
地方では仕事の選択肢が限られる場合があるため、移住前に働き口を確保しておくのが理想的です。リモートワークが可能な人は問題ありませんが、地域の雇用状況や起業支援の有無も確認しておきましょう。
地域コミュニティへの適応
地方では、地域住民との関係が密接なことが多いため、自治会活動や地域行事に参加する機会が増える可能性があります。積極的に地域と関わることで、移住後の生活がより充実したものになります。
無償譲渡の住宅を活用して移住するには、事前準備が重要です。特に以下のポイントを押さえておくと、スムーズに移住を進められます。
- 自治体へ事前に問い合わせし、制度の詳細を確認する
- 住宅の修繕費用を把握し、補助金制度を活用する
- 移住支援制度をチェックし、補助を受けられるか確認する
- 生活インフラや仕事の確保を事前に考慮する
- 地域の文化やコミュニティに馴染む準備をする
これらのポイントを押さえ、理想の移住生活を実現させましょう!
まとめ
日本各地の自治体では、人口減少や空き家対策として 家や土地の無償譲渡 を実施しています。今回の記事では、無償譲渡を行っている自治体の具体的な事例を紹介しました。最後に、無償譲渡制度を活用するための 重要なポイント をおさらいしましょう。
無償譲渡を受ける際のチェックポイント
無償で家や土地を手に入れることができる制度ですが、応募する前に 以下のポイントをしっかり確認 しておくことが大切です。
1. 自治体の募集条件を確認する
各自治体ごとに 応募条件が異なる ため、必ず公式サイトや担当窓口で詳細を確認しましょう。
例として、以下のような条件が設定されることが多いです。
条件 | 具体的な内容 |
---|---|
定住の意思 | 一定期間その地域に住むことが義務付けられる |
改修・修繕の負担 | 多くの場合、リフォーム費用は自己負担 |
年齢制限 | 若者・子育て世帯向けの制度が多い |
職業要件 | 農業・林業など地域の産業に関わることが条件になる場合あり |
2. リフォームや維持費の試算をする
「無償でもらえる」とはいえ、多くの物件は 一定の改修が必要 です。
また、固定資産税や維持管理費が発生するため、事前に試算しておきましょう。
項目 | 費用の目安(参考) |
---|---|
リフォーム費用 | 50万円〜数百万円(物件の状態による) |
固定資産税 | 年間数万円程度(自治体による) |
水道・光熱費 | 都市部よりも安い傾向あり |
交通費・生活コスト | 車が必須となる地域が多い |
3. 自治体のサポート制度を活用する
移住者向けの 補助金や支援制度 を活用すれば、リフォーム費用や生活費の負担を軽減できます。
例えば、以下のような支援制度がある自治体もあります。
- リフォーム補助金:住宅改修に対する助成金
- 移住支援金:移住者向けに一時金の支給
- 子育て支援:子育て世帯への特典(保育料補助、教育費補助など)
- 起業支援:地域で事業を始める人向けの助成金
4. 生活環境やコミュニティを調査する
地方移住では、単に「家がもらえる」ことだけでなく、 その地域での生活が自分に合うかどうか も重要なポイントです。
- 近隣にスーパーや病院はあるか?
- 交通の便はどうか?車が必要か?
- 地域コミュニティとの関係はどうか?
- 学校や子育て環境は整っているか?
実際に 移住体験ツアー や お試し移住制度 を利用し、生活を体験してみるのもおすすめです。
無償譲渡を活用して理想の移住生活を!
無償譲渡制度は、地方移住を考えている人にとって 大きなメリット があります。
しかし、移住は人生の大きな決断。 長期的な視点で計画を立て、慎重に検討することが大切 です。
最後に、この記事で紹介した自治体の情報を参考に、ぜひ自分に合った地域を見つけてください。
各自治体の公式サイトをチェックし、疑問点は役所に直接問い合わせるとスムーズに進められます。
これから移住を考えている方にとって、この記事が役立つ情報となれば幸いです!
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